Technical Comparison Report

A18 Pro vs M1

半導体としてのスペック・メモリ構成比較

2026-03-11

製造プロセス・ダイ概要

項目 A18 Pro M1(無印)
登場時期 2024年9月(iPhone 16 Pro)
2026年3月(MacBook Neo)
2020年11月(MacBook Air / Pro / Mac mini)
製造プロセス TSMC N3E(第2世代3nm FinFET) TSMC N5(初代5nm EUV)
ダイサイズ 105 mm² ≈ 119 mm²(118.91 mm²)
トランジスタ数 ≈ 200億 ↑25% 160億
トランジスタ密度 ≈ 190 MTr/mm² ≈ 134 MTr/mm²
パッケージング TSMC InFO-PoP(DRAM積層) SiP(System in Package)
A18 Proは2世代分の微細化(N5→N3E)を経ており、ダイサイズはM1より12%小さいにもかかわらずトランジスタ数は25%多い。これにより新世代コア・大容量キャッシュ・強化NPUを小さなダイに収めることが可能になっている。

CPUコア構成

項目 A18 Pro M1(無印)
CPU ISA ARMv9.2-A 新世代 ARMv8.4-A(v8.5-A互換)
Pコア設計名 Everest Firestorm
Eコア設計名 Sawtooth Icestorm
対応Mシリーズ世代 M4と同世代(2024年) M1(A14と同世代, 2020年)
Pコア数 2 4 ×2
Eコア数 4 4
総コア数 6 8
Pコア最大クロック 4,050 MHz(≈ 4.05 GHz)↑26% 3,228 MHz(≈ 3.2 GHz)
Eコア最大クロック 2,420 MHz(≈ 2.42 GHz) 2,064 MHz(≈ 2.06 GHz)
A18 ProのEverest/SawtoothコアはM4チップと同じ設計であり、M1のFirestorm/Icestormから約3世代分のマイクロアーキテクチャ進化を経ている。IPCはM1比で大幅に向上しているが、Pコア数が2対4という構成差により、マルチスレッド性能はM1と拮抗する結果となる。

キャッシュ階層

項目 A18 Pro M1(無印)
Pコア L1i 192 KB / コア 192 KB / コア
Pコア L1d 128 KB / コア 128 KB / コア
Pコア L2(共有) 16 MB(2コア共有)8 MB/コア 12 MB(4コア共有)= 3 MB/コア
Eコア L1i 128 KB / コア 128 KB / コア
Eコア L1d 64 KB / コア 64 KB / コア
Eコア L2(共有) 4 MB(4コア共有) 4 MB(4コア共有)
SLC(System Level Cache) 24 MB ×3 8 MB
L1キャッシュの構成は世代間で同一だが、Pコアあたりの実効L2容量に大きな差がある。A18 Proは2コアで16MBを共有するため1コアあたり8MBの潤沢なL2を使用でき、シングルスレッド性能を重視した設計。SLCも24MBで3倍あり、メモリバス幅が狭いことを補う役割も担っていると考えられる。

メモリ構成(決定的な構成差)

項目 A18 Pro M1(無印)
メモリ規格 LPDDR5X 新規格 LPDDR4X
転送レート 7,500 MT/s(3,750 MHz) 4,266 MT/s(2,133 MHz)
チャネル構成 4ch × 16-bit = 64-bit 8ch × 16-bit = 128-bit ×2
メモリバス幅 64-bit 128-bit
ピーク帯域幅 ≈ 60 GB/s 68.25 GB/s ↑13%
搭載容量 8 GB(MacBook Neo固定) 8 GB / 16 GB 選択可
メモリ実装方式 InFO-PoP(ダイ上に積層) SiP(パッケージ基板上に並置)
A18 Proはスマートフォン向け設計のため64-bitバス(4ch)に留まる。LPDDR5Xの高い転送レート(7,500 MT/s vs 4,266 MT/s)をもってしても、バス幅が半分であるため合計帯域幅ではM1に劣る。M1はPC向けに設計段階から128-bitバス(8ch)を確保しており、これがGPU・メモリ律速処理での差を生む最大の構造的要因である。またMacBook Neoは8GB固定で16GB選択不可。

GPU / NPU

項目 A18 Pro M1(無印)
GPUコア数 6コア(iPhone 16 Pro)
5コア(MacBook Neo)
7コア(Air下位)/ 8コア
HW レイトレーシング 対応(第2世代)NEW 非対応
メッシュシェーディング 対応 非対応
NPUコア数 16コア 16コア
NPU性能 35 TOPS ×3.2 11 TOPS
GPUコア数はM1の方が多く、メモリ帯域もM1が広いため、GPUベンチマーク(Metal)ではM1がやや上回る。ただしA18 ProはハードウェアレイトレーシングやメッシュシェーディングといったGPU機能面で大きく進化している。NPUは3.2倍の性能差があり、Apple Intelligence等のオンデバイスAI処理ではA18 Proが圧倒的に有利。

Geekbench 6 ベンチマーク比較

Single-Core
A18 Pro (Neo) 3,461
M1 (Air) 2,346
A18 Pro +47.5%
Multi-Core
A18 Pro (Neo) 8,668
M1 (Air) 8,342
A18 Pro +3.9%
Metal (GPU)
A18 Pro (Neo) 31,286
M1 (Air) 33,148
M1 +6.0%
シングルコアではA18 ProがM1を約48%上回る。これはクロック差(+26%)だけでは説明できず、3世代分のIPC向上が大きく寄与している。マルチコアではPコア数2 vs 4の差をクロック・IPC向上で補い、ほぼ互角。GPU(Metal)はM1が約6%上回るが、これはGPUコア数(5 vs 7-8)とメモリ帯域幅の差に起因する。MacBook Neoでは1コア削減されて5コアとなっている点も影響している。

総合考察:なぜ「A18 Pro ≒ M1」となるのか

A18 Proは半導体としては、プロセスノード(N3E vs N5)、コアアーキテクチャ(Everest/Sawtooth vs Firestorm/Icestorm)、NPU性能(35 TOPS vs 11 TOPS)のいずれにおいてもM1を大きく凌駕している。しかしMacBook NeoのA18 Proが総合性能でM1と「同等」に収まる構造的理由は明確である。


1. Pコア数の差(2 vs 4)
M1はPC向けにPコアを4基搭載しており、マルチスレッド演算ではこの差が直接効く。A18 ProのIPC/クロック向上は1コアあたりの性能を大きく引き上げたが、並列処理能力では倍のPコアを持つM1と均衡する。


2. メモリバス幅の差(64-bit vs 128-bit)
スマートフォン設計のA18 Proは4ch/64-bitバスであり、PC設計のM1の8ch/128-bitバスに対して帯域幅で約13%劣る。LPDDR5Xの高転送レートでもバス幅のハンディを完全には埋められていない。GPU性能やメモリ律速ワークロードに特に影響する。


3. GPUコア数の差(5 vs 7-8)
MacBook NeoではさらにGPUが1コア削減されており、M1のGPU(8コア版)とは3コアの差がある。


逆に言えば、半導体としての世代差を、搭載構成の量的差が相殺しているのがこの比較の本質である。A18 Proの「質」(新プロセス・新アーキテクチャ・大容量キャッシュ・高NPU性能・ハードウェアRT)はM1を明確に上回っており、同じコア数・同じバス幅で比較すれば圧倒的な差になるはずである。MacBook Neoは$599という価格設定のために意図的に構成を絞った製品であり、A18 Proの能力を測る指標としてではなく、スマートフォンSoCのPC流用がどこまで成立するかを示す事例として理解すべきだろう。